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なぜ世界は「電気自動車」推しなの? (4) トヨタの誤算と中国市場が与えた「悪影響」【abeo工房考察】



 

この記事は昨年2022年1月6日にnoteに執筆したものを転載・編集したもので。

noteでは有料公開していましたが、1年すぎたので無料公開にしています。

合わせてこちらでもアーカイブで残していこうかと。

一部、追記しています。

では本編スタートです。

前回のはこちら

 

 

1回目/2回目のあらすじ

前回までで

・2050年まではパリ協定の目標を軸に変化が起きる。
・規制を見越した各自動車メーカーの動き
・全体のパイが減っていく自動車業界の合理化の判断
・アメリカが混乱した理由
・パリ協定の範囲などを再確認
・日本自動車メーカーの動き ※トヨタ除く

を書きました。

詳しくは読んでいただければ・・と。

さて、今回はトヨタのいままでの動きを復習です。

 

 

トヨタの現状 〜ヨーロッパでのシェアは…〜

日本自動車メーカーの主戦場が北米と前回書きましたが、トヨタも同様です。
トヨタが2021年米国市場で首位になるくらいの規模ですので、その力の入れ方がよくわかりますよね。

参考にレクサスの2020年の国別販売台数の割合を見てください。

 

 

画像
レクサス2020年国別販売台数比率

 

最大が北米です。
2番目の中国を合わせると74%です。

トヨタ本体でも同様の傾向となるわけで、如何に北米市場が大事か?・・がわかります。

逆に比較してヨーロッパの少なさも目につきますよね。
世界トップ3に入る市場で日本に近い程度ですから。

これらから読み取れることは、ヨーロッパでは日本の世で思われているようなトヨタが大人気・・は無いということですね。

 

 

トランプ前大統領再選を信じた(と思われる)トヨタ

 

さて、北米に話を戻しましょう。
そのアメリカ、トランプ前大統領時代にパリ協定を離脱しています。
2017年6月のことです。

このトランプ前大統領の動きに対し、北米を主戦場とする日本の自動車メーカーはある意味喜んだのかも?・・しれません。そのトランプ政権時、トヨタがトランプ派議員に献金していたのは有名な話ですよね。

理由は推して知るべし

 

また2019年3月にはトランプ前大統領の動きに対し、米工場への追加投資830億円と雇用600人増など発表。
今となっては「そういう”てい”」で進んでいたのではないか?・・と思われるようにも思えるわけですが、その意味ではトランプ大統領とべったりな状況であったと言えましょう。

 

ただし、このアメリカ動きがその後の動きに影響を及ぼします。

トヨタの誤算

ご存知の通り、その後の2020年大統領選でトランプ氏が敗れました。
そして2021年1月20日にジョー・バイデン大統領が誕生。

そして約4年ぶりにパリ協定に復帰するわけです。
これで流れがグイッと変わったのは言うまでもなく。

そして、このバイデン大統領のパリ協定の動きに対しトヨタは明らかに動揺しました。

大統領選(2020年11月3日)後からです。
トヨタが脱内燃機について声が大きくなってきたのは。

2020年10月26日に菅前首相が2050年カーボンニュートラル を発表。
2020年11月3日にバイデン氏の勝利が判明。
そして2020年12月17日に自工会会長として会見。
「電動化=EV化にあらず」「政府の脱ガソリンに苦言」といったような見出しでニュースが出ました。

その後にも「トヨタが電気自動車への移行を遅らせようとアメリカ議会にロビー活動している」等のニュースがあったりも。

またトヨタはトランプ派に献金をしていたんですが、1月の議会襲撃事件の後に『わが社は今後の献金の基準について再検討を行っている』と発言。
・・が、連邦選挙委員会(FEC)のデータによれば、2月に大統領選の結果認定に反対したトランプ派議員に1000ドル献金していました。

その件でアメリカでは「民主主義の敵」とSNSで批判発生。

その後のロビー活動の件でも嫌気がさしたアメリカトヨタユーザーは多かった様子です。

その1月にトヨタは米環境保護局への不具合報告漏れで制裁金を支払うことになりました。
その額、186億円。

これらがトランプ側についていた・・という事で起きた・・とは思いませんが、アメリカでの風向きが変わったのは明確に思える出来事でした。

反BEVと感じられるトヨタの動きもこれで理解できると思います。

つまり、パリ協定を脱退したトランプ政権が続くと睨んで献金。
そして自社に有利になるようにしていたのが選挙で一気にアメリカの方針変換。
それに動揺し、いろんなキャンペーン展開、そしてユーザーからのバッシング・・です。

「キジも鳴かずは撃たれまい」、そう思う出来事でした。

結果的にパリ協定の取り組み開始である2020年に新たなBEVと言えるモデルは出ず、その後に発表されたRAV4っぽいbZ4Xもハイブリットプラットフォーム流用。
※これの内容については別記事で書きます。

つまり、パリ協定離脱の4年間が完全に開発のブランクとなった可能性があります。

豊田社長の行動についても15台のBEV(ほぼ全てコンセプトカー)の発表までは電気自動車関連のニュースでは明らかに敬遠。
オフィシャルで表に出てくることがありませんでした。

そのBEVの発表についても”北米からの明らかな「トヨタの遅れ」と思われている声に対してのポーズに思えるわけですが、明らかなトーンの違いにトヨタの方向転換が明確になったわけです。

注意すべきはこれらは日本ではなく、北米向けのPRという点・・でしょう。

ちなみにトヨタイムスのCM最新版で全方位について語ってますが、FCEVにも本気とのことなので、BEVと同様に15車種展開を期待したいですね。

もちろんやってくれるでしょう。トヨタなら。

 

日本自動車メーカーの動きが鈍かった理由を深く考察。

 

パリ協定の取り組みに対し、日本自動車メーカーは遅れている・・と言われています。
結果的になぜそのようになってしまったのか?

それを考察するわけですが、それは「中国市場」が強く影響していると思われます。

北米と中国がメインな日本自動車メーカー。
これは欧州のメーカーとも北米のメーカーとも立ち位置が微妙に違います。

その中国で日本自動車メーカーは大きなシェアを持っていますが、
現地にある日本自動車メーカーは全て「中国国営企業との合弁会社」です。
近年、外資規制が緩和傾向ということもあり、テスラは外商独資企業で設立できていますが、それ以前は「合弁が進出の条件」と言っても良い状態でした。

避けられないこの前提があったので、結果的に中国国営の会社と合弁会社を設立してきたわけです。
また関税についても合弁でないと非常に高額になります。

そしてこれらに付きものなのは技術漏洩。

なのでどの企業も現地合弁会社では・・

・現地向けモデルの生産
・共通パーツの製造と輸出

その2つを行なっているケースがほとんどです。

資産の持ち出しについてもハードルが高いので、安い労働力を生かした安価に作った共通パーツの輸出・・でコストメリットを出していたといえましょう。

VWはDSG、トヨタでは2.4Lエンジンなどなど中国から輸出。
それらは多岐に渡っていますよね。

中国地消地産モデルには既に電気自動車ラインナップが。

ここで注目すべきは個性的すぎる中国専用モデルです。
そしてその中国スペシャルには既にBEVがあったりします。

画像
iA5 走行可能距離 510km

こんなBEVがすでに中国にはあります。
そして・・

画像
CH-R EV

こういうモデルも。
中国以外では見ないモデルがかなり多くありますよね。

ホンダも・・

画像
X-NV EV 走行可能距離465km、60km/h定速走行では600km
画像
M-NT EV 走行可能距離480km、60km/h定速走行では635km

中国では独自モデルのBEVを販売。

そして三菱も・・

画像
AIRTREK EV

ちなみに三菱のこのBEV、中国基準の走行可能距離は520kmです。

これらを見ると、日本自動車メーカーもちゃんと用意していた・・となると思いますが、これについては度外視されています。
日本でも話題にならないですよね。

なぜか?

「中国合弁会社製造の地産地消スペシャルで、グローバルモデルではないから」

これらがどこの国でも出せるモデルなら日本自動車メーカーも声高らかに宣伝してると思いますが、そうもできない事情がある・・ということですね。

一見不思議に見えますが、これが中国市場が結果的に特殊であるといういい例です。

 

最大の市場の北米はパリ協定脱退、二番目は地産地消モデル&合弁会社、ヨーロッパはシェア少ないので後回し・・となれば?

 

さて、改めて考えていくと、こうなります

・北米はトランプ大統領がパリ協定脱退
→BEVを急ぐ必要なし
・中国は地産地消スペシャル
→合弁会社で勝手に地産地消スペシャルを製造するのでお任せ
・ヨーロッパはシェアが少ないので様子見
→ハイブリット/PHEVで時間稼ぎ

日本自動車メーカーからすれば、一番大きいシェアの北米はパリ協定を脱退したので、急ぐ必要がなくなったわけです。
2位の中国は地産地消スペシャルが現地プロダクトで合弁会社で用意するので、ヨシとした・・と考えられます。
そしてヨーロッパでは日本自動車メーカーのシェアが少なく、そもそもそこまでBEVへの移行が早いとも思っていなかった。

・・と、それが現実だったのではないか?・・と私は考えています。

つまり、ヨーロッパ市場はシェアが低いから様子見にしたことが、
結果的に動きが無いと思われ、世界から「遅いと認定された」・・と。

そしてアメリカのパリ協定復帰による急速なゼロエミッション 推進に焦って
しまった・・と。

そのように見れると思います。

 

欧州自動車メーカーからの見え方は・・

 

一方、欧州自動車メーカーはパリ協定の震源地ですから、どんどんゼロエミッション 推進側へ進んでいきます。

結果的にそれがグローバル展開の早さにつながっていくわけです。

そして北米については欧州メーカーはシェアが少ないので、後回しでも良いと判断していたのかもしれません。

中国独自モデルはグローバルモデルが先行することで、それらが地産地消モデルのベースになることが多くなります。
結果、中国で共通部品製造が開始され、コスト圧縮につながっていっていくんでしょう。
この点は日本自動車メーカーにはできない状態になっていますよね。
独自モデルが先行しているので。

そのように日本と欧州の立ち位置の違いで結果が大きく変わったと言えると思います。

そして厄介なのは、この立ち位置の違いで発生したブランクが今後もそのまま影響する可能性がある・・という点です。

これを詰めるとすれば、トヨタは全方位でなくBEVに集中して取り掛かる必要があると考えます。

 

最後に・・

 

なぜ世界が電気自動車推しなのか?・・はパリ協定が軸になっていることは明白なわけで、その目標からすればゼロエミッションとなっていきます。

2050年までの目標が決まっているので、この流れは変わらないと思われます。

国際合意ですからね。

そして市場ごとのシェアの違いで自動車メーカーの向き合い方が変わった・・というのも事実でしょう。

そしてその電動化は日本自動車メーカー潰しでもなんでもないわけです。
むしろ、その論調はプロパガンダなのかもしれません。

もし日本自動車メーカーを潰そうとする国があるならば、それは欧州でなくアメリカです。

ヨーロッパでトヨタはシェア5%未満です。
一方、米国市場では2021年の首位になるくらいの規模です。

どちらがその市場で、その土地や現地自動車メーカーへ影響を及ぼしているか?

考えるまでもないですね。

もし、「アメリカ市場をヨーロッパメーカーが狙っているから日本自動車メーカーをBEVで潰して」・・と仮に考えるなら、それはアメリカの自動車産業も巻き込むのでトヨタを〜・・とくくれなくなる話になりますよね。

そしてそもそも所得に対してのガソリン価格が安いんですよね。
ぶっちゃけ、所得を無視してガソリン価格だけ見ても安いんです。

2021年6月時点のレギュラーガソリン価格ですが・・

日本  150.3円/L
アメリカ 89.1km/L
ドイツ 207.5円/L

となります。

財務省の資料を見てもらうとその傾向は一目瞭然ですね。
https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/consumption/133.pdf

だからアメリカではV8 5.7Lのトヨタタンドラが売れたりするんですね。
ちなみにアメリカではそれらを売るためにトヨタは排ガスで天秤とるためにハイブリットを作っている・・と言われていたりするとか。

そんなガソリンが安い国で他所の国/メーカーが特定メーカーをターゲットに電気自動車で策略立てれます?????

そもそも排ガスを出さない・・という意味ではBEVしかないわけで。
そういう思考の人からすれば日本車のハイブリットは眼中に入りませんよね。

それはユーザーの選択肢となるので、もしそうなったら「競争で負けた」・・となるわけで。

どちらにしても世界は舵を切りました。

温暖化対策で再エネ推進、そして自動車はBEVを軸にその他は選択肢として持っていますよね。

そして2020年がBEV元年になったのはパリ協定の取り組み開始が2020年だったから・・です。

それから2年。
たった2年でかなり世界のBEVに対する状況が変わってきました。
そしてそれらは今後も加速していくはずです。

でも日本は何事も後追い。
充電インフラが目に見えて良くなるのはあと3年はかかりそうに思いますので、無理にBEVを買う必要はないと思います。

でも理解しておくことがあります。
「今はBEV普及の過渡期である」・・ということを。

そして国の再エネ電気や充電インフラ普及も過渡期です。

現状で遠い未来を語るのではなく、将来の計画で未来を語っていくことが大事だと感じます。

さて、日本はいつ世界に並ぶのでしょうか?

 

 

 

 

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